昨今の建設工事の現場では、求められる施工技術が専門化や多様化、高度化がますます進んでいます。年間をとおして多くの地震が発生したり、多湿であったりする日本という土地の特性を踏まえると、完成品の質的水準を安定させるためにも施工管理技術がますます重要視されます。
施工管理技士試験は、国土交通省が建設工事の現場で働く人々の技術力の向上を目的として設けられたものです。この施工管理技士試験の内容が、令和3年度から一部改正されます。今回は、令和3年度から改正される施工管理技士試験の内容について解説します。
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目次
まずは、従来の施工管理技士試験の内容についておさらいしましょう。施工管理技士には、建築施工管理と電気工事管理の2つの種目があります。令和3年度からは、それぞれ第一次検定と第二次検定に分類されます。
建築工事を行うにあたり、施工計画や施工図の作成、その工事の工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理を、適確に行うために必要とされる技術です。[注1]
建築施工管理は1級と2級、それぞれ第一次検定と第二次検定に分類されます。1級と2級でも、第一次検定では建築学等と施工管理法、法規についての内容です。第二次検定では、1級の場合は施工管理法、2級では加えて躯体施工管理、仕上施工管理の資格が付与されます。
電気工事を行うにあたり、施工計画や施工図の作成、その工事の工程管理、品質管理、安全管理等工事の施工の管理を適確に行うために必要とされる技術です。[注1]
電気工事管理も1級と2級、それぞれ第一次検定と第二次検定に分類されます。1級と2級でも、第一次検定では電気工学等と施工管理法、法規についての内容です。第二次検定では、1級と2級どちらでも施工管理法の資格が付与されます。
これまでの施工管理技士試験では、学科試験を行ったのち、実地試験を受ける必要がありました。実地試験に合格することで、技士の称号が得られます。令和3年度からは、学科試験と実地試験をそれぞれ第一次検定と第二次検定に独立した試験とした再編されます。
第一次検定に合格すると技士補、第二次試験に合格すると技士の称号が得られるようになります。
これまでの制度では、学科試験に合格したものの実地試験に不合格してしまった場合、翌年までしか学科試験は免除されませんでした。1年経ってしまうと、改めて学科試験から受け直す必要があったのです。
令和3年度からは、再編された第一次試験に合格することで得られる技士補の資格が無期限に有効となります。技士補の資格を取得しておけば、好きなタイミングで第二次試験への挑戦が可能です。
これまでの規定では、1つの現場に最低1名は専任の監理技術者がつく必要がありました。令和3年度より適用された新制度により、第一次試験に合格して技士補の資格を取得し、主任技術者要件を満たすことで、監理技術者補佐として現場につけられるようになります。
加えて、専任の監理技術者補佐がいれば、監理技術者が2つの現場を兼務できるようになりました。これまで不可能でしたが、令和3年度からは監理技術者が現場の掛け持ちができるようになったのです。
これまでの試験制度では、2級技術検定に合格している場合、5年以上の実務経験を重ねることで、1級技術検定を受けられるようになっていました。実務経験が必須でしたが、令和3年度からは第二次検定に合格したあとすぐに1級の第一次検定を受けられるようになります。
また、これまでの制度で学科試験に合格した方は、従来の免除期間に従って第一次検定が免除されて第二次検定に挑戦できます。ただし、1級第二次検定を受けるためには、従来と同様に5年以上の実務経験が必要となります。
なお、一級建築士試験に合格している場合、施工管理技士試験の第一次検定が免除されるので、受験資格さえあればそのまま第二次検定に挑戦できます。
2級の試験の内容には、技士補の取得が追加されたことで細かい部分が変化しました。第一次検定では、施工管理を正確に行うために求められる基礎的な能力や知識があるかどうかを判定します。これまでの学科試験を中心としながら、実地試験の内容が一部含まれています。
第二次検定では、主任技術者として必要とされる能力や知識があるか判定します。従来の実地試験を中心とながら、学科試験の内容が一部含まれています。
第一次検定は主にマークシート形式、第二次検定は経験論文や記述式問題が出題されます。
1級の試験では、第一次検定と第二次検定のどちらでも監理技術者としての能力や知識が重要視されます。第一次検定では、2級で試験の中心となっていた内容が、監理技術者補佐としての立場で必要な能力や知識についての問題が出題されます。
これまでの学科試験と同じ内容を基本とし、実地試験の問題が一部含まれています。監理技術者補佐としての応用能力が試されます。
第二次検定では、いよいよ監理技術者としての能力や知識がないかを判定されます。従来の実地試験と同様の問題を中心として、学科試験の内容が一部含まれます。
2級の試験と同様に、第一次検定はマークシート形式、第二次検定は経験論文や記述式問題が出題されます。
施工管理技士試験は、令和3年を境に従来とは大きく変化しました。これまでは、学科試験と実地試験の両方に合格してようやく技士の資格を取得できました。令和3年度からは、それぞれ第一次検定と第二次検定に名前を変えて再編されます。第一次検定を合格することで技士補の資格を取得できます。
また1級の第一次検定は、2級の第一次検定に合格したあとすぐに受験できるようになります。1級の第二次検定は、従来と同様に5年以上の実務経験が必要ですので注意してください。
試験内容についても、細かな変化があります。これまでの学科試験と実地試験の内容が混ざるようになっています。第一次検定は学科試験が中心で応用として実地試験が、第二次検定では実地試験を中心に学科試験で求められる知識問題の一部が、それぞれ移行されています。
監理技術者が現場を掛け持ちできるようになりますので、ぜひ施工管理技士試験の受験をご検討ください。
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