いまだ感染者が増え続けている新型コロナウイルスに対して、職場でも適切な対策を施すことが求められています。では、建設現場で働く人々の新型コロナ対策はどうなのでしょうか。
国土交通省からは2020年5月に「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」が発表され、7月には改訂版が出されました。
この記事では国土交通省のガイドラインのなかから建設現場にかかわる予防対策について取り上げ、詳しく説明します。
※参考:建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン|国土交通省
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目次
まずは従業員一人ひとりが日頃から体調管理を心がけることが大事です。そのうえで、出勤時に熱がないか、新型コロナウイルスの感染が疑われる症状が出ていないかなど、監督者は従業員の体調をチェックする必要もあります。
また、事務所や現場などに消毒液を設置し、手洗い・うがいを徹底するのはもちろん、マスクやフェイスシールドを着用して飛沫を飛ばさないように心がけることも大切です。
作業時だけではなく、朝礼や点呼、事務所での打ち合わせの際も油断しないようにしましょう。着替えや休憩、食事をするときも含め、人が多く集まる場では2メートルの距離をとることを意識して密を避けるなど、基本的な対策を徹底することが大事です。
新型コロナウイルスの感染を拡大させないためには、マスクやフェイスシールドなどの着用が必須です。ただし、夏場は熱中症にならないよう気を配る必要があります。建設現場は室内でもエアコンのない場所が多く、気温や湿度が高くなりがちです。
マスクを着用していれば熱がこもり、さらに危険度は増すでしょう。熱中症対策としては冷感素材のマスクを使用したり、空気が通りやすいマウスシールドやフェイスシールドを活用したりするのも選択肢のひとつです。
単独での作業や他の人との距離が保てる屋外の作業など、感染のリスクが少ない状況を確保できるなら、無理をしないでマスクを外すことも考えましょう。感染防止と熱中症対策の取り組みを、現場の作業員に周知徹底することも重要です。
扇風機や送風機、可能ならドライミスト発生装置を設置するなど、通風をよくしたり、温度を下げる対策を施したりするのも、感染防止と熱中症対策を両立させるための役に立ちます。
閉鎖空間で人が密集する環境になり得る可能性が高い内装工事は、特に気を配らなくてはなりません。マスクやフェイスシールドを着用するとともに、区画分けや人数制限を設けて作業にあたることも視野に入れる必要があります。
扉や窓を開放して自然換気ができるように気をつけるのはもちろん、必要に応じて換気装置の設置も検討しましょう。大部屋であっても過信せず、フロア別に人数制限できるよう工程の調整を行い、3密を避けて作業することが大切です。作業用エレベーターを利用する際も、3密にならないよう使用ルールを設ける必要があります。
作業員が一度に休憩に入ればどうしても密になりがちです。また、一息つける休憩時間は気が緩む可能性もあり、作業員同士で会話が弾むこともあるでしょう。しかし、油断せず、休憩所や喫煙所などにおいても、できるだけ2メートルを目安として距離を確保するように努めることが大切です。
休憩所のスペースがあまり広くない場合、一定数以上は一緒に入らないよう工夫することが必要になります。例えば、休憩所を追設したり、グループにわけて休憩時間をずらすようにしたりすることも3密を避ける方法です。これらの対策が難しい場合、パーテーションの設置や向かい合わせで座らないようにするだけでも、ある程度3密を防ぐことができます。
もちろん、休憩所にはしっかり手洗いしてから入る、換気をする、テーブルや椅子など共用で使用するものは消毒をするなど、基本的な感染対策を徹底することも忘れてはなりません。
作業を滞りなく行うには、一定数の作業員が必要です。ただ、感染症対策を徹底しなければならない状況下では、作業も工夫して行わなければなりません。一斉に全員で作業を行うのではなく、複数班にわけて入場や退場の時間をずらすことも考慮に入れるなど、工夫して作業計画を立てることが大切です。
部外者の立ち入りも極力減らすようにしましょう。もし、立ち入らせる場合は作業員と同様の感染症予防対策を徹底してもらうことが必要です。
建設現場に向かう際、全員で自社の車両に乗り込んで出向くことも多いかもしれません。しかし、一緒に同じ車両で移動する時間が長ければ、当然感染のリスクは高まります。
移動時の3密を避ける方法としては車両数を増やし、1台あたりに乗車する人数を減らすことも方法のひとつです。また、自家用車を所有しているなど、公共交通機関を利用せずに済む作業員ならば、自宅と現場の直行直帰を推奨することもリスクを減らすことにつながります。
ただし、車両を増やしたり、個人での移動を推奨したりする場合、現場に車両が多く集まることになります。駐車できる場所が少ない現場では、周囲に迷惑をかけることになる可能性もあるため、近隣に駐車スペースを確保することが必要です。
現場で使用する工具や車両のハンドル、重機のレバーなど、複数の作業員が頻繁に触れる部分はこまめに消毒を行いましょう。必要に応じて使い捨てのゴム手袋などを着用し、直接触れずに操作すれば、感染リスクを減らすことにつながります。
消毒には設備や器具に合わせてアルコールまたは次亜塩素酸ナトリウム溶液などを使用します。アルコールは60%の濃度でも効果があるといわれていることから、エタノールや2-プロパノールの70%が入手できない場合は、60%台のエタノールも許容範囲です。
次亜塩素酸ナトリウム溶液は0.05%のものが効果的ではあるものの、ヒタヒタになるくらいの十分な量で拭き掃除できるなら0.008%以上でも有効であるといわれています。ただし、拭く前にあらかじめ汚れを落としておくことがポイントです。また、家庭用洗剤などに含まれる界面活性剤も一定の有効性のあることが確認されています。
万一、始業時のチェックで体調のすぐれない人がいれば、現場には行かせないようにし、途中で体調を崩した人が出た場合も速やかに帰宅させなければなりません。
ただ、気を配っていても感染者が出てしまうことはあり得ます。もし、感染者が出てしまった場合、速やかに工事の発注者に報告したのち、保健所などの指示に従うことが大切です。また、感染者の行動を踏まえたうえで、勤務場所の消毒を行う必要もあります。
新型コロナウイルスの感染が拡大すれば、いつ、だれでも感染する可能性があります。
もし感染者が出た場合、感染者本人はもちろん、同じ勤務場所で一定時間一緒に作業をしていた人など、接触した履歴がある勤務者に対しては、必要に応じて自宅待機させることも検討しなければなりません。ただし、感染者の個人名などが特定されることがないよう、人権に配慮しながら対応することが重要です。
感染者や濃厚接触者が一定数以上になれば、予定通りに作業が進められなくなる可能性が出てきます。受注者側での感染者や濃厚接触者の発生により、予定通りのスケジュールで工事を継続することが難しい場合、発注者は工事を一時的に中止するよう指示することが可能です。
ただ、国土交通省が発表した対応方法では、新型コロナウイルス感染症による工期の見直しについては、特別な理由がない限り受注者の責任にならないとされています。また、作業の大幅な遅れが予想されるケースで受注者側から工期の見直しの申し出があれば、必要に応じて工期の再設定や請負代金の変更などの適正な措置を施すことと定められています。
2020年は新型コロナウイルスの感染によって日常生活が一変し、これまでの常識が通用しなくなることも増えました。建設業界においても、新しい様式で作業にあたることが求められる場面が多くなっています。
換気やマスク等の着用、こまめな消毒をはじめ、作業時はもちろん、移動中や休憩中も人と人との距離を保つことが必要です。手間がかかることは増えましたが、できる対策はしっかり行い、建設に従事する作業員が安心して働ける環境を整えましょう。
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