施工管理の仕事に付いている、あるいはこれから目指そうとしている20代の方の中には、経験が浅くても高収入を得られるのか気になっている方もいるでしょう。施工管理の年収は、業務内容や勤続年数、勤務する企業などによって差があるため一概に平均値で語ることは難しいものの、業務および年齢層で傾向を捉えることは可能です。
本記事では、施工管理の業務に従事する20代の平均年収と残業代・賞与の金額、他業界との差や年収差が出るポイント、さらには年収アップのためにできることについて解説します。
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目次
まずは施工管理とはどのような仕事なのかを把握しておきましょう。
施工管理は建設業界に属する業務で、大まかにいうと建設現場を管理・監督するリーダーです。
工事の品質はもとより、スケジュール通りに作業が行われているか確認する進行管理や、現場で作業に当たるスタッフの把握、コミュニケーションなど、工事全体を俯瞰しつつ調整する責任者の立場です。
この職務に当たる者は「施工管理技士」と呼ばれ、必ずしも熟練の建設作業員が就任するわけではなく、20代の若手人材が担うケースも珍しくありません。
工事はいわばプロジェクト単位で計画・実施されるものであることから、建設業界における実働部隊の管理職とも位置付けられるでしょう。
一般的に、プロジェクトや現場を統括するリーダーや管理職は、一定の経験を積んだ人材が任命されることが多いです。しかし施工管理技士の仕事は20代でも就けるので、他業界の責任者の年齢層と比較すると珍しいといえるでしょう。
建設現場の重大なミッションを担うことから、比例して報酬も高くなると思われますが、実際には20代の施工管理技士はどのくらいの年収を得ているのでしょうか。
当然ながら勤務先や担当プロジェクトなどによって金額に差がありますが、以下に複数のデータをもとにした年収の目安をまとめました。
20代で施工管理技士を勤める人の平均年収は、400万~480万円ほどと考えられています。
平均値としつつも金額に幅があるのは、勤務する企業での待遇がそれぞれ異なることと、同じ20代でも前半と後半ではやはり年収差が生じるためです。
建設業界全体としての平均年収は20代前半で約355万円、20代後半で約436万円であることから、同業界の同年代平均値よりも施工管理技士は高収入であるといえます。
ただし繰り返しになりますが上記の施工管理に従事する20代年収は、あくまでも複数のデータをもとにした推測値です。
勤務する企業の事業規模や担当したプロジェクトの総工費などが大きければ大きいほど報酬も多くなる傾向があり、能力と現場次第では20代でも700万円を超える年収を得る施工管理技士もいます。
※参考:国税庁.“令和4年 業種別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額”
20代の施工管理技士に残業代が出るかどうかは、各勤務先の服務規定によるため一概にはいえません。
ただ施工管理の仕事では、多くのヒトとモノが刻一刻と変化しながら動く巨大なプロジェクトを統括するため、計画通りに工事が進まないことも少なくありません。
仮に工期が遅れた場合にはその誤差を修正するべく、作業のピッチを早めたり、各所との調整を行ったりする必要が生じることから、施工管理は残業が多く発生しやすい業務です。
そのため残業手当が支給される企業であれば、その分が収入として加算されます。あるいは見込み残業代として、あらかじめ一定額を給与に組み込むケースもあります。
そのため業界として、または20代の施工管理技士としての一般論ではなく、各企業が残業代にどのような規定を設けているかを把握することが大切です。
20代の施工管理士の賞与についても、結論からいうと各企業の取り決めによるため、必ず支給されるものとは限りません。支給される場合であっても、入社前に大まかな目安は提示されるものの、賞与は業績と連動する性質があることから絶対的な基準とはいい難いのも事実です。
賞与が支給されるケースでは年間を通じた月給の〇カ月分と表現されることが多く、例えば夏に〇カ月分・冬に〇カ月分といった形もよく見受けられます。
ただしこれも企業によって異なるため、年に2回ではなく3回支給されることもあれば1回というパターンもあります。
また年俸制として年収を12で割った額が、毎月給与として支給される場合もあります。
ここまでは、20代の施工管理技士が、同じ建設業界でも同年代と比べると高い年収を得ていることを解説しました。では他の業界と比べるとどうでしょう。
国税庁が公開している令和4年版の「業種別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額」のデータによると、全業種での平均給与額は20代前半で約272万円、20代後半で約388万円です。
これを20代全体で捉えると平均年収は約330万円となることから、20代施工管理技士の400万~480万円という年収額は同年代の全業種平均と比べて高額であることが分かります。
なお、各業種の20代平均年収については、例えば製造業では約381万円、卸売業・小売業では約274万円、宿泊業・飲食サービス業では約205万円、不動産業・物品賃貸業では約343万円、運輸業・郵便業では約373万円となっています。
このことから、多くの業種と比べて20代施工管理技士の平均年収は高めであるといえるでしょう。
※参考:国税庁.“令和4年 業種別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額”
※参考:厚生労働省.“令和5年賃金構造基本統査 結果の概況 産業別”.
同じ20代の施工管理技士でも、平均年収の予測値にはかなりの幅があることを先に述べました。
これは同年代の同業者間にある程度の年収差があることを意味していますが、同じ職業であるにもかかわらずこのような現象が起こるのはなぜなのでしょうか。
以下で、20代施工管理技士の年収に差が出るポイントについて、代表的な8つの項目を見ていきましょう。
同じ20代の施工管理技士でも年収に差が出る要因として、業種の違いが挙げられます。
業種とは工事の対象となるカテゴリのことで、例えばエネルギー関連やプラント系統に関わる業種の施工管理は、年収が高い傾向にあります。
さらにゼネコンでは高待遇であるケースが多く、中堅クラスの企業でも平均より高い年収であることが一般的です。
企業の規模はストレートに年収差へと影響する要因の一つです。
例えば大手と中小では平均で70万円程度の年収差があるとされ、勤務先の事業規模によっては同じ施工管理技士でも100万円以上もの差が付くケースがあります。
一概にはいえませんが、企業の規模が大きくなるほど、比例するように工事自体の規模が大きいプロジェクトも増加します。そうした工事の管理責任者となることで、年収も高くなる傾向にあるといえるでしょう。
雇用形態は大きく正規社員(正社員)と非正規社員に分けられ、非正規では契約社員や嘱託社員、あるいは派遣社員などの種別があります。
正社員雇用の年収が最も高額で安定しているというイメージがありますが、工事はプロジェクト単位で行われることから、期間を限った場合には正規雇用を上回る待遇で人材を求めるケースも少なくありません。非正規であっても正社員の年収を超える人材もいることから、多様な雇用形態によって年収に差が生じているといえるでしょう。
ここでいう職種とは、施工管理の対象となる工事ジャンルの違いです。
大きくは建築・土木・管・電気があり、中でも土木の職種はインフラ整備などの公共事業が含まれることも多く、年収が高めになる傾向にあります。
ただし、企業の事業規模差などと比べると直接的な年収差への影響は軽微な部類の項目です。
近年では業種によらず20代でもキャリアアップする例が増えていますが、施工管理技士も役職に就くことで年収はアップすることが普通です。
担当業務と責任が増加することからそれに見合った手当てが加算されるケースも多く、施工管理技士としても一般社員と役付き社員では当然年収に差が出てきます。
ただし管理職など一定の職位以上では、高待遇の反面で残業代が付かなくなる場合もある点に注意が必要です。
経験年数とはすなわち施工管理技士としての場数を踏んできたこと、多くの現場をこなしてきたことの証明です。
一口に20代といっても最大で9年の開きがあり、その分の経験値で年収に差が出ることは不自然ではありません。
施工管理技士としての能力は経験年数のみで評価できるものではありませんが、その間にどのような現場をどれだけ取り仕切ったかという実績は待遇に対する大きな考課基準となります。
施工管理技士そのものが国家資格であることから、まずはこれに合格することが重要ですが、さらに職種ごとに細分化された資格があります。
このような資格を得ることは施工管理を可能とする業務の幅を広げるため、それだけ広範な現場を監督できる人材として高い評価へとつながります。
特定職種の現場を管理・監督するために必要な資格もあることから、多くの種類を保有する人とそうでない人の間に年収差が生じる要因の一つです。
20代の施工管理技士が勤務する地域によっても年収差が発生します。
他のさまざまな業界と同様に建設業界でも人手不足が深刻な課題となっており、地域によっては高待遇で迎えられるケースが少なくありません。
特に仕事の集中する都市部での人材不足が表面化しており、そうした地域を中心に事業を展開する企業に勤務したり、該当するエリアの現場などを担当したりすると年収に差が出てくる場合があります。
いずれにせよ20代の若手専門職は、人手不足の業界において貴重な人材です。
前項では20代の施工管理技士に年収差が出る要因を解説しましたが、裏を返せばそのポイントを押さえることで年収アップを実現できるといえます。
以下にて施工管理の仕事で年収を上げるためにできる、確実性の高い代表的な方法を3つ紹介します。
施工管理技士の資格は1級と2級に分かれており、まずは1級を取得することが年収アップへの近道です。
先に述べたように職種ごとに細分化された施工管理の資格が定められており、それぞれに可能な業務の範囲が決まっています。
そのため、できるだけ多くの状況に対応できる資格を取得するのも一つの手段です。
年収アップを目指す上で特におすすめの資格として、以下の2つが挙げられます。
・1級建築施工
・1級土木施工
まず1級建築施工とは、高度で大規模な工事を監督できるようになる資格です。取り扱える工事の規模に制限がなく、施工計画から予算管理、資材の発注、スタッフの統括まで幅広い業務を管掌することが可能です。
また、この資格の保有者は工事現場の施工品質レベルを確保するための「監理技術者」になることもできます。
一方の1級土木施工は、大規模な土木工事を監督できる資格です。1級は工事の請負代金に制限がありません。2級では請負代金の合計額が4,500万円以上、建築一式工事で7,000万円以上の取り扱いができないため、大きな差があります。こちらも同様に監理技術者になることが可能です。
また上記の2種以外にも、建設機械・電気・電気通信・管・造園といった1級施工管理技士の職種があります。
このような資格で多様な工事に対応できるようにすることで、年収アップを見込めます。
同じ企業に長く勤めることも年収アップの確実な手段の一つです。
勤続年数や実績に伴って昇給していくことは他の業界と同様であり、ベースアップもあるため長く勤めるほどに年収は上がると考えられます。
ただし昇進で役職手当が付くなど特別な状況ではない限り、急激に昇給する性質のものではない点に注意しましょう。
現状よりも高待遇の職場に転職することも、年収アップのための有効な手段です。
勤務先企業や地域によって待遇は大きく異なるため、より高い年収で転職することは十分可能です。
ただし転職先が評価するだけの実務経験や実績、あるいは保有資格など人材としての価値をアピールできる十分な材料をそろえて計画的に実施しましょう。
本記事では、20代で施工管理の仕事に従事する人の年収はいくらなのか、また差が出るポイントや年収アップのための有効な方法などについて解説しました。
施工管理の仕事は、多くのヒトとモノが動き、多大な費用がかかる巨大プロジェクトを統括することです。計画通りに進行しないことは珍しくなく、予期せぬトラブルや事故などさまざまな困難をその都度、乗り越えていかなくてはならない仕事でもあります。
高度な専門職人材として、建設業界では多くの20代の施工管理技士が活躍していますが、関係各所や現場スタッフとのコミュニケーションを円滑に行う能力など、資格以外にも求められる大切な資質がある点を十分に理解しましょう。
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