施工管理技士は、建設現場で仕事をする方が取得すると収入アップにつながる国家資格です。資格を取得すると知識やスキルを持っている証明になるため、転職にも有利になるでしょう。
本記事では種類別の試験の難易度や合格率、試験合格のコツを紹介します。施工管理技士の基礎知識や資格取得のメリットについても解説しますので、施工管理技士の資格取得にチャレンジしたい方は参考にしてみてください。
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目次
施工管理技士とは、建築現場などで工程管理・品質管理・安全管理・原価管理・環境管理を行う国家資格保有者のことです。施工管理技士の国家資格は、建設業法27条に基づいた施工管理技術検定に合格した人に与えられます。
施工管理に携わるには、関わる業務の範囲が広いため、建築に関わる知識やスキル、計画的に進行を管理する能力が求められます。そうした知識やスキルがあることを客観的に保証する国家資格が施工管理技士と言えるでしょう。
なお建設現場では、法令に基づいて「監理技術者」や「主任技術者」を配置する必要があります。監理技術者や主任技術者になるには、施工管理技士の資格保有者であることが求められ、管理業務だけでなく、施工計画の立案や建築物の設計図作成、作業員の指導や建築確認申請などの事務手続きといった幅広い仕事を手がけます。
出典:e-Gov法令検索「建設業法第27条」(参照2022-11-22)
施工管理技士の資格を取得すると、一定の知識やスキルがあることを証明できます。そのことによって次のようなメリットがあります。
建設業界では、公共工事の入札一つ取っても有資格者がいるだけで会社の評価が上がるなど、施工管理技士の資格保有者に対するニーズや評価が高い傾向にあります。そのため施工管理技士の資格を取ると、資格手当など給与面での待遇が良くなると期待できます。中には、合格時に報奨金支給などの支援制度を設けている企業もあります。
特に施工管理技士の上位資格である1級を取得すると、より専門性が高い人材として認められるため、昇進にも有利なのが一般的です。当然ながら昇進すれば給与額も上がっていくことでしょう。
施工管理技士の資格保有者は転職市場でも有利です。より給与や待遇のいい企業にキャリアアップしたい場合は、資格を取得しておくと転職活動にも役立つでしょう。
近年は高齢化により、施工管理技士の有資格者が多い団塊世代の退職が相次いでいます。有資格者の不足が加速している状況を受けて、施工管理技士の需要が高まっていることも、転職希望者にとっては追い風となっています。
施工管理技士には、仕事内容に応じて7種類の技術検定試験があります。具体的な種類と仕事内容は次のとおりです。
施工管理技士の種類 | 業務内容 |
---|---|
建築施工管理技士 | 建築工事の工程管理を適切に行える技術を証明する資格 工事の進捗確認や技術レベルの維持、安全確保に携わる工事現場はオフィス・マンション・施設・学校など |
土木施工管理技士 | 土木工事現場での施工管理を可能にする資格 道路・鉄道・港湾・河川・海岸工事や水道・ガス工事、港湾・空港工事などに携わる |
管工事施工管理技士 | 配管に関わる工事の施工管理を可能にする資格 上下水道管・空調ダクト、冷暖房設備、浄化槽や給排気管・冷媒管の設計や管理に携わる |
電気工事施工管理技士 | 公共工事の電気設備工事の施工管理を可能にする資格 変電・送電設備、照明や配線や受電計画の立案や配線設計に携わる入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針に定める事項の追加 |
電気通信工事施工管理技士 | 電気通信に関連する工事を全般的に管理できる資格 電気通信工事増加で2019年に新設された資格で光ファイバーの敷設やLAN配線、ケーブルの配線に携わる |
造園施工管理技士 | 造園工事や緑化工事の施工管理を可能にする資格 公園の開発や庭園の設計、外構などの管理に携わる実際に作業する職人を束ねる造園のスペシャリスト |
建設機械施工技士 | 建設機械の運用・安全を専門に管理できる資格 油圧ショベルやクレーン車、ブルドーザーやロードローラなどの建設機械を操作・管理に携わる |
上記のように施工管理の検定は7分野に分かれており、それぞれの検定で難易度はさまざまです。また、それぞれの分野に「1級」と「2級」があり、等級によって難易度は異なります。ここでは「1級建築施工管理技士」「2級建築施工管理技士」「土木施工管理技士」「電気工事施工管理技士」の難易度を紹介しましょう。
1級建築施工管理技士は、全ての規模の工事管理や監督ができる資格です。2級建築施工管理と異なり、高層ビルや大規模マンションなど、規模の大きな建築工事の管理を行えます。
試験は1次検定と2次検定の2回行われ、両方に合格すると資格を取得できます。令和3年度の1次検定と2次検定の合格率(合格者数÷受験者数)は次の表のとおりです。
試験区分 | 合格率(合格者数÷受験者数) |
---|---|
1次検定 | 約36.0%(8,025人÷22,277人) |
2次検定 | 約52.4%(6,708人÷12,813人) |
なお、1次検定に合格した人は、2次検定が不合格でも2級管理施工技術士補の資格が与えられます。
出典:一般財団法人建設業振興基金「令和3年度 1級建築施工管理技術検定結果表」(参照2022-11-21)
2級建築施工管理技士の仕事内容は、1級建築施工管理技士と大きな違いはありません。ただし、取り扱える建物・工事現場の規模に違いがあります。2級建築施工管理技士は建物に対して設計できる制限があり、建物の高さが13m、軒高9mを超える設計はできません。
2級建築施工管理技士も1級と同じく、1次検定と2次検定があり、資格を取得するには2つの試験に合格しなければなりません。1次検定に合格した人が2級管理施工技術士補の資格を取得できるのも1級と同じです。
2級建築施工管理技士試験の1次検定と2次検定の合格率(合格者数÷受験者数)は次の表のとおりです。
試験区分 | 合格率(合格者数÷受験者数) |
---|---|
1次検定 | 約49.0%(15,736人÷32,128人) |
2次検定 | 約35.1%(8,205人÷23,380人) |
出典:一般財団法人建設業振興基金「令和3年度 2級建築施工管理技術検定結果表」(参照2022-11-21)
土木施工管理技士は土木工事の施工管理を行える資格です。資格は1級と2級に分かれており、1級は大規模な道路工事や橋梁工事などの大きな土木工事の施工管理、2級は比較的小規模な土木工事の施工管理を行います。
土木施工管理技士を目指す人の多くは2級を取得してから、実務経験を積み重ねながら1級へステップアップしています。なお、1級も2級も1次検定では受験資格に実務経験は求められません。
土木施工管理技士試験の1次検定と2次検定の合格率(合格者数÷受験者数)は次の表のとおりです。
試験区分 | 合格率(合格者数÷受験者数) |
---|---|
1級・1次検定 | 約60.6%(22,851人÷37,726人) |
1級・2次検定 | 約36.6%(9,732人÷26,558人) |
2級・1次検定 | 約72.5%(21,876人÷30,160人) |
2級・2次検定 | 約40.7%(11,838人÷29,112人) |
出典:国土交通省「令和3年度 1級土木施工管理技術検定」(参照2022-11-21)
出典:国土交通省「令和3年度 2級土木施工管理技術検定」(参照2022-11-21)
電気工事施工管理技士にも1級・2級の2等級があります。1級電気工事施工管理技士の資格を取得すると「監理技術者」として認められます。2級電気工事施工管理技士であれば「建設工事における主任技術者」として認められるなど、電気工事の分野で施工管理に携わる方には必須の資格です。
電気工事施工管理技士も、2級を取得してから1級にステップアップするのが一般的です。他の施工管理の資格と同じく、1級も2級も受験資格に実務経験は求められません。
電気工事施行管理技士試験の1次検定と2次検定の合格率(合格者数÷受験者数)は次の表のとおりです。
試験区分 | 合格率(合格者数÷受験者数) |
---|---|
1級・1次検定 | 約53.3%(7,993人÷15,001人) |
1級・2次検定 | 約58.8%(4,655人÷7,922人) |
2級・1次検定 | 約57.1%(4,776人÷8,359人) |
2級・2次検定 | 約50.4%(3,493人÷6,932人) |
出典:一般財団法人建設業振興基金「電気工事施工管理技術検定実施状況」(参照2022-11-21)
施工管理技士試験は、どの種類も幅広い範囲から出題されるため、効率よく学ぶことが大切です。ここでは施工管理技士試験に合格するためのコツを紹介します。
仕事をしながら受験勉強をするための時間は限られています。期間を決めて計画的に準備していきましょう。あくまで目安ですが、例えば2級建築施工管理技士の合格に必要な勉強時間は、一般的に約250時間とされています。1日に2時間勉強時間を確保できるとしたら「250日÷2時間」で125日間(約4カ月間)の勉強期間が必要です。余裕をもって半年くらいのスパンでスケジュールを立てておけば、合格に必要な勉強時間を確保できるはずです。
合格するための勉強方法としておすすめするのは、過去に出題された問題をしっかりとおさらいしておくことです。テキストを読んで基礎を学んだら、その後は過去問5年分を繰り返し解いてみましょう。
施工管理技士の試験はさまざまな分野から、幅広く出題されるため、得意分野で点数を稼ぐより、広範囲を基礎から勉強しておくことが大切です。繰り返し過去問を解くことで幅広い勉強が可能になります。
問題集や過去問集は、解答を覚えるだけではなく、解説をよく読んで「なぜ、その答えになるか」を理解しましょう。試験では過去問と似た問題が出題されますが、全く同じ問題ではありません。問題を解いて解答を暗記するだけではなく、解説をしっかり読んで「なぜ、この回答になるのか」を理解すると、過去問と似た問題に対応できます。
市販のテキストや過去問集を活用すると、独学でも施工管理技士の試験はクリアできるはずです。ただし「独学ではモチベーションが保てない」方、「独学ではついつい勉強をさぼってしまう」方は、講習や通信講座を受講するとよいでしょう。費用はかかりますが、講習や通信講座なら講師に質問できたり、添削してもらったりできるため効果的に学べます。
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